新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大(コロナ禍)に伴い、医療・介護従事者、災害救援者、自殺予防活動家、自治体職員など、COVID-19に対応する支援者のメンタルヘルスの悪化が世界的問題になっています。
コロナ禍で支援者のメンタルヘルスが悪化する要因の一つとして、「モラル傷害(Moral Injury)」が指摘されています。この概念は、兵士が戦争などの極限状況において自分の信念や倫理・道徳に反して組織の命令で殺傷行為をすることで生じる心理的外傷を指し、コロナ禍では医療従事者が自分の感染リスクを冒して活動したり、治療法がない中、感染死亡を目の当たりにしたりすることで生じると欧米で報告されています。しかし我が国ではモラル傷害の報告はほとんどありません。
もしモラル傷害が組織と個人の心理的ジレンマの結果であれば、支援者がそのような場面での心理的態度と対処行動を学習し、あるいは所属組織がその風土を改善して支援者を守ることができるような心理支援技術によって、モラル傷害を「予防」し、支援者のメンタルヘルスを維持して、医療機関や支援組織の崩壊も抑止すると考えられます。
これらの課題に対して、本研究では科学研究費基盤研究(B)「コロナ禍で戦う支援者のモラルを護る心理的支援技術の開発研究」として現在調査を実施中です。
本研究では、不条理な環境下で活動する支援者の「モラル」に着目し、支援者のモラルと活動中に生じるジレンマを精査し、また、モラルの維持により、メンタルヘルス不調が軽減するかどうかを検討していきます。
調査結果に即して、モラルの傷害を予防する認知の修正と対処行動を学習する支援者の心理支援研修プログラムを開発を目的とします。
完成したプログラムの有用性を検証し、COVID-19への対応や自殺予防に関わる支援者の支援活動の質が向上することを目指します。
支援者(医療・介護従事者、災害救援者、自治体職員、その他のインフォーマルなサポーターも含め、いわゆる人助けをする人)のメンタルヘルスやモラルについての学びを深めるサイトです。